町医者の日記/2020-06-19

2020-06-19 (金) 09:51:09

新型コロナウイルス感染者では気管支喘息の基礎疾患保有率が有意に少ない

気管支喘息患者が新型コロナウイルスに感染しにくい可能性を示唆ということ。

国立成育医療研究センターのプレリリース(2020年6月2日)

https://www.ncchd.go.jp/press/2020/pr_20200602.html

プレリリースの意図は何か

気管支喘息の治療はステロイド吸入薬がファーストチョイスとなることで劇的に進歩してきた。

免疫にかかわる新薬も登場してきている。

ステロイド治療は諸刃の剣と言われ、炎症、免疫は抑えるがウィルスを始め細菌等の感染に弱くなると言われている。新型コロナウィルスの感染を恐れるあまりステロイド薬等を中断してしまい、喘息がコントロール不能になることを危惧しているためと推測される。

喘息のステロイド吸入療法は世界的には1970年代初めから開始されるようになり,わが国でも1978年にベクロメタゾンプロピオン酸エステル(べコタイド®,アルデシン®)が発売された。

僕が医者になったのは1980年。喘息は気管支の攣縮(痙攣)であり、ステロイドは最後の最後に使うものと教育されていたのを思い出す。

その後、喘息の病態は気道の炎症であり、その炎症を抑えることが治療の本質だという考え方になり、1993年にアレルギー疾患治療ガイドライン(JGL)』1)が発表されてから徐々に吸入ステロイド薬が使用されるようになった。

小児を含め一般によく使用されるようになったのは2000年以降のことだ。

吸入ステロイド薬の普及により入院患者は激減し、喘息のコントロールは劇的に容易になった。

吸入ステロイド薬の安易な中止は2000年以前に戻り、喘息発作患者の入院が急増すると思われる。

喘息患者さんは風邪をひきやすいか

否。

吸入ステロイド薬のために喘息患者さんが風邪を引きやすくなるのなら吸入ステロイド療法は普及しなかった思われる。

新型コロナ感染症に吸入ステロイド薬が効く

気管支喘息発作は気管支レベルの炎症、軽い免疫暴走ととらえることもでる。

新型コロナ肺炎の初期は肺胞から間質レベルの炎症、免疫暴走といえる。ステロイドが効いてもおかしくないと思われる。

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)が疑われる場合はステロイドの大量投与(ステロイドパルス療法、全身投与)が行われる。

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